週刊チャオ、まだあります

かつてチャオBBSにいた全ての人たちへ、ぼくたちはまだ"週刊チャオ"にいます。

チャオラーよさらば

 僕は影響を受けやすい。

 影響を受けて、真似をする。
 それが僕の人生だった。

 大好きだった漫画は、コロコロコミックに載っていたカービィのギャグ漫画だ。
 おねだりして単行本を全巻買ってもらった。
 最新刊が出れば、もちろんすかさず買ってもらった。

 僕は同じ話を何度も何度も繰り返し読んだ。
 1巻から読み始めて、最新刊まで読む、ということを何度でもやった。

 そして僕は漫画のセリフを暗記して、親に披露した。
 覚えたセリフで笑いが取れると、幸せな気持ちになれた。

 リピート&リピート。

 繰り返し見て、自分でも繰り返す。
 それが僕にとって最上級の遊びだった。
 

 

 僕は影響を受けて、それを真似するばっかりだ。

 たとえば今のこの文体は、お笑い芸人さんのエッセイの文体に近い。
 僕が読んできた芸人さんのエッセイは、大体がこんな雰囲気の文章だ。

 誰の、とは言わない。
 気恥ずかしくて言えないのが半分と、ど忘れして言えないのが半分だ。

 たぶん芸人さんたちには「エッセイを書く時にはこういう文体にしなさい」という執筆マニュアルがあって、先輩芸人たちからの厳しい手直しを受けながら代々同じ文体を受け継ぐ風習があるのだろう。(そんなわけはないのだが)

 とにかく、最近も芸人さんのエッセイを読んで、影響を受けた。
 それでこんな文章になっている。
 なんてわかりやすいんだろう。
 あまりにも単純すぎる。
 
 単純すぎる僕は、ある日チャオBBSという掲示板で週刊チャオとチャオ小説に出会う。
 特に僕が好きだったのは、まわしげりさんの『しろうと勇者の冒険記』だ。
 
 ホップスターさんの『スパイラル』にも強い憧れを抱いていたけれど、ギャグ漫画ばっかり読んできた僕は『しろうと勇者の冒険記』を真似して、コメディ重視の冒険ものを書くことにした。
 
 デビュー作『勇者のジュエチャ』である。
 これは『魔法陣グルグル』というギャグ漫画の影響でもあった。
 
 ギャグ漫画の影響が強かった僕だが、その後別の作品に影響を受け始める。
 他でもない『ソニックアドベンチャー2バトル』と、それからもう一つ『ファンタシースターオンライン』である。

 この二つのゲームは僕に「シリアス」を与えた。
 真面目っぽい小説を書くようになったのだ。

 特にPSOからの影響は強かった。
 PSOはなにかと暗いお話が多い。

 最後には希望がちょっぴり見えるけれど、全体的には暗い雰囲気。

 それが僕の体験したPSOだった。

 勇者のジュエチャの後に始めた連載『とある組織』でもPSOの影響は見られる。
 PSOには、手をモチーフにしたボス、オルガ・フロウが出てくる。
 人型のボスなのだが、囚われているというイメージで、胸部が手のように開閉したりするのだ。
 オルガ・フロウの影響で、とある組織でも手が重要アイテムとして登場する。

 また週チャオではなく土星LIBRARYでの公開となったが、PSOの設定に強く影響を受けて、アンドロイドが登場するチャオ小説も書いていた。

 それほどまでにPSOは、僕の人生を揺さぶった。

 この後『「Beam of Hope」』では人間がチャオに変身する。
 これも先のオルガ・フロウが、人体実験の末に生まれた怪物である設定を踏襲しているように思う。

『Don't try to be a hero』では、なんと主人公は人間からカオスになる。

 主人公がカオスになって強靭な力を手に入れる、というのは『CHAOS PLOT』でもやっている。

 その展開になるずっと前に連載をやめてしまったけれど『ヒーロー・ガーデン』でも終盤に主人公はカオス化する予定だった。

 これらは仮面ライダーっぽい要素にも思えるけれど、僕の中ではPSOの影響だった。
 PSOではD因子という、生物だろうが機械だろうが融合・浸食しようとする困ったものが存在する。
 オルガ・フロウもこのD因子の実験で生み出された悲劇だ。

 人間がD因子で、化け物になる。
 人間がチャオやカオスの遺伝子で、化け物になる。
 という具合に真似しているわけである。

 だけど僕は悲劇を書きたいわけじゃなかった。
 だから悲劇的なヒーローを生み出すに留まり、一応はハッピーエンドで終わらせている。
 
 
 さらに世間では漫才ブームが到来する。
 僕がお笑いに触れたのはNHKの『爆笑オンエアバトル』だった。
 その後『エンタの神様』もあった。

 だけどよくよく思い出してみれば、
 漫才ブームが到来する前から、お笑いの番組は多かった。
笑う犬の冒険』とか。

 生きていれば、コメディが寄ってくる。
 そういう時代だったのだ。

 その後、僕はギャルゲーにも影響を受けた。
 ギャルゲーはコメディ要素も強く、僕の書くコメディは当時好きだったゲームと歩調を合わせていた。
 けいりんの「毒舌+~っす系後輩口調」キャラはその代表格だ。

 
 綺麗な言い方をすれば「影響を受ける」なのだが、
 悪意ある言い方をするなら「パクリ」とも言える。
 僕の創作はそういったもので成り立っていた。
 
 さらに僕は、ただ模倣するだけではなくなってくる。
 次第に僕の創作意欲の中には「嫉妬」という感情も混ざってくることとなる。
 
 それは感想をもらえる人ともらえない人との差が激しい、
 残酷なチャオBBSという環境が生み出した、
 氷の中だろうと海底だろうと燃え続ける炎だ。

 
 週刊チャオが休刊してから、面白いチャオ小説を見れば、嫉妬+模倣をするのは僕の定番パターンとなった。
 たとえばろっどさんの『チャオ・ウォーカー』という名作がある。

 これを真似した。

 嫉妬と模倣だけでなく、ろっどさんとの遊びの一環でもあったのだが、
 とにかく真似をした小説だ。
 ついでにこれは劇場版機動戦艦ナデシコもパクっている。

 そしてチャピルさんの『チャオガーデン』にも強く嫉妬した。

「週チャオ史上最高の作品ってチャオガーデンだったよね」
 なんて、将来オフ会で結論が出てしまうかもしれない。

 チャピルさんは休刊前に色々大変な思いをしたから、
 その栄誉をもらうに相応しい人ではある。

 だけど、だからと言って、最高のチャオ小説の座を簡単に他人に譲りたくはない。

 そんな対抗心をむき出しにして、放ったのが『チャオアパート』だ。
 
 それだけではない。
『チャオの羽』『ガーデンコール』 なんかも、チャオラーをぎゃふんと言わせたくて書いていた。
 
 ぎゃふんと言わせられたかは不明だ。
 ただ少なくとも僕はまだ、自分の小説を認めさせねば、という危機感を抱いている。
 
 僕は、人の心を打ちたい。
 そういう小説を書きたい。
 

 週チャオ関連の言葉で僕が好きなのは、
「私はここに居ます」だ。

 これは『週刊チャオの歴史』で登場する言葉だ。

 その気持ちが、みんなにチャオ小説を書かせたのだと、
 そう語られている。
 
 僕は今も叫び続けている。

 でも僕が居ることは伝わっている。
 週刊チャオの中じゃあ、スマッシュさんはちょっと名の知れた存在だ。

 未だにチャットルームに入っている連中にとってみれば、
 もはや知る知らないってレベルを超えている。

 でもね。

 それだけでは足りないのだ。
 それじゃあ満足できないのだ。

 僕の伝えたい、「ここ居る私」っていうのは、
 もっと別の存在だから。

 等身大の自分というのとは違う存在。
 それはつまり、幻想の中の自分だ。

 そう、僕は幻想を現実にしたい。
 そしてその光景を、僕自身が見たがっている。

 僕は、僕自身に、幻想の自分が現実に居るところを見せたいのである。

 きっと僕はここに居るはずだ。そうだろう?
 今もそう叫び続けている。

 
 最後に、今現在の話をしよう。
 僕はチャオ小説を書き続けている。

 とっても馬鹿みたいなことに、
 誰も読まないかもしれないチャオ小説を、
 毎年少なくとも1作は投稿している。

 未だに『チャオガーデン』の影を追いかけている。
 それなのにチャピルさんは今年、新作『ライカ記念日』を投稿するつもりだ。
 おいおい、まだチャオ小説に革命を起こす気かい?
 危機感がやばい。

 僕はこの壁をぶっ壊すことができるのか?
 正直、怪しいところである。

 だけど素直に負けを認めるのは悔しいので、全力で足掻いてみるつもりだ。

 
 そして、チャオ小説ではない、
 普通の小説も書いている。

 カクヨムという小説投稿サイトで、
 楽しく投稿をしている。

 しかも、チャオBBSの時には全然書けなかった、他人の小説への感想をここではがんばって書いている。

 あの時こうしていればなあ、なんて思いながら、
 同じ後悔をしないように僕はただ自分で感想を書くだけではなくて、
 カクヨム全体で感想を書く人を増やそうと企んで、活動している。

 
 もちろん、他人の真似も続けている。

 真似?パクリ?模倣?
 どの言い方がいいのかわからないけれど、
 とにかく昔からの習性は今も健在だ。

 ミーハーとか言われてしまいそうだが、どうやらこれが僕の強みらしい。
 
 ずっとやっていれば、パクリ疑惑も出てきそうなものだが、今のところそんな気配はない。

 それもそのはずだ。
 パクっているはずなのに、後で自分で読み返しても、オリジナルとはけっこう違うものになっているのだ。

 たぶん色々なものに影響を受けすぎてしまったせいで、それら全部がごちゃ混ぜとなっているらしい。
 ごちゃ混ぜになったものから「元ネタ」を一つ一つ取り出していくことは、到底できない。
 それができる人間は、作者である僕くらいなものだろう。

 だけど僕自身、いつどこでなにから影響を受けたのか、はっきり覚えていない要素もある。
 だって本当に色々なものに影響されちゃっているから。

 そんなにたくさん元ネタを覚えきれないし、一つ一つを記録しておくなんてマメなこともしていなかった。
 つまるところ僕は「パクリ過ぎて、パクリじゃなくなる」という状態まで行き着いたということだ。

 これで勝負することを否定されてしまったら、僕はお手上げだ。
 お手上げをしたところで僕は悟空ではないので、元気玉のチャージをして一発逆転、ということもできない。
 だから僕は、影響を受けやすいという僕の特徴を否定しないようにした。

 
 なお本記事のタイトルは『武器よさらば』のパロディである。
 ヘミングウェイの小説のタイトルであるが、PSOの公式掲示板に投稿されたエッセイのタイトルでもある。
 格安でレアアイテムを販売する不思議なプレイヤーのお話だ。
 
 ここでもまたPSOの影響である。
 ただただ影響を受けてさらばと言ってみただけなのだ。
 だから、さらばと言いはしたが、僕はここから去るつもりは全然ない。
 
 
 でも。
 かつてチャオBBSや週刊チャオから去った人たちへ、
 その時に言えなかった言葉を今、言います。
 さようなら、チャオラー。
 
 そして、チャオBBSや週刊チャオそのものは消えても、
 チャオラーの場所はここにあることを、
 いつか気付いてくれますように。

 あっ、いっけね。
 宣伝忘れてた☆
 12月23日、新作チャオ小説『ガーデン・ヒーロー』公開します☆★☆
(結局、アイデア浮かんだし、書くの間に合いました☆)
 予告編をもりもり公開したのでぜひ見てね!